諫早干拓潮受堤防を歩く

2006年7月10日「諫早干拓」の潮受堤防を歩き(往復)ました。
堤防の長さは7kmの直線で、90%完成していますが立ち入り禁止です。
両岸は柵で封鎖され、見学するには事前に申請し、許可を得る必要があります。
今回は「諫早殿さん道の会」に便乗し参加させてもらいました。

7キロの直線距離を歩く心境はどのようなものかと、それが一番の関心ごとでした。

潮受堤防の中央地点から北部(諫早市高来・小長井町)の眺めです。
海岸線まで約4kmあります。雲がかかって見えませんが山は多良(五家原岳)です。
左が調整池、右は有明海で海の色の違いがはっきりしています。

潮受堤防の中央地点から南部(雲仙市吾妻町)の眺めです。
雲仙の平成新山・普賢岳は雲が掛かっています。左の草の生えた斜面の外側が有明海になります。
農道として造られた道路は、2車線で歩道がついています。この農道を利用すると島原半島へ抜けるのにこれまで諫早・不知火橋径由で25kmあったものが8kmに短縮され、車の時間にして30〜40分早くなります。

北部起点から南部方向を見た潮受堤防の前面です。ご覧のように石張りになっていました。
堤防の下は軟弱な潟土で沈下を防ぐために、サンドコンパクションという杭が打たれているそうです。
堤防の大きさは、右端を歩いている人影と比べてみてください。

これは北部排水門です。排水門は北部に6門、南部に2門あります。
この排水門が防災機能の要となっている重要な施設です。

中央部では、調整池の水を堤防を跨いで大きなパイプで海側に汲み上げ排水していました。これは永久的な施設ではなく仮設のパイプのようでした。

パイプから排出される調整池の水です。

潮受堤防の内側には、調整池があります。調整池の水位はマイナス1mに保つため、干潮時に調整池内の水は海へ排水されます。
北側海岸から南の吾妻海岸まで歩き通し引き返したころ、排水門が開かれた瞬間に出会いました。
有明海の海はもともと黄色に濁っていますがそれ以上に調整池の水は濁っていました。
対面の壁にある目盛りは、上の印がプラスマイナス・ゼロの高さ、下はマイナス1mを示しています。これから判断すると、ただいまの海水面はマイナス1・5mぐらいになります。
歩いてみての感想は、行けど行けど単調な風景で、遠くの山を眺めるしかありませんでした。
長い防音壁やトンネルのある高速道路を走るときのあの単調な風景に退屈するのと同じ心境でした。
この日は、台風3号が朝鮮方向へ北上していましたがその影響で風速5〜6mの南風が吹き、往きは向かい風、復は追い風でした。往復3. 5時間の歩きとなりました。

スタート前に干拓事務所の職員が概要説明をしてくれました。
干拓地は稲作を目的にしたものかと思っていたら、畑作だけで稲は作らないそうです。野菜と酪農の大規模経営で大型機械を導入し、いわば北海道農業の九州版を目指している感じを受けました。
ここの潟土は肥料の三要素である窒素、燐酸、カリのうち、窒素だけが不足し、燐酸、カリは10年間ぐらいはやらなくても充分だと言うことでした。ジャガイモ、ニンジン、タマネギなどを試験栽培しているが、タマネギは玉が大きくなりすぎ商品にならないからいかにしてS、M、Lの規格に小さくするかに苦心しているそうです。

諫早干拓は、環境、防災の面でクローズアップされ、ある程度知っていましたが農地利用の面ではまったく無知だったと改めて感じた「潮受堤防歩き」でした。

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