イタリア旅行記

第5回 乗りもの(2)
4日目、フィレンチェからナポリまで約4時間の列車の旅を味わった。
これまでの都市間の移動は殆どがバスであったので列車の旅は新鮮味があった。
特に4日目午前中のフィレンチェ市内観光はバス乗り入れ禁止。朝8時から歩き尽くめで疲れきっていた足には最高の乗りものであった。
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅をイタリア自慢のユーロスターが出発すると、早速靴を脱いでむくんだ足を癒した。
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅を15時ちょうど出発、ローマには16時35分到着、15分間の待ち合わせで16時50分にナポリに向けて出発した。列車はこれまでの進行方向とは反対に後部のほうが先頭になりスィチバックの形で走り出した。
終着駅ナポリに着いたのは18時45分であった。ナポリの街は心もち傾きかけた太陽が照り付けていた。
ホームで大きなスーツケースを各人受け取り、ゴロゴロとキャスターの音を響かせながら長い行列を連ねて駅前広場で待っているバスまで運んだ。なんと5分以上もかかったような長い長い距離に感じた。

サンタ・マリア・ノヴェッラ駅、朝のプラットホーム。

4日目の朝、目覚めたのは5時、朝食の6時半までには時間がある。シャワーを浴びてすっきりした気分で朝の散歩に出た。何となく歩いているとまもなくして駅に着いた。人出は少なく閑散としていた。駅裏になる西口から正面の東口へ構内を歩いた。改札のゲートに突き当たったら引き返すつもりであった。しかし、改札のゲートらしきものはなく東口へ通り抜けてしまった。改札は何処でするのだろうか。
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の広いチケット売り場。

15時の列車に乗り込む前に構内を散策した。
チケット売り場の窓口は20ぐらいある。ところが営業しているのはたったの4箇所の窓口でそこには長い行列が出来ていた。残りの窓口は全部締めてある。人出が多いこの時期にどうしたことだ。日本ならばお客がおとなしく行列に並んでいるはずがない。理解に苦しむ光景であった。(写真の時計は14:22と表示している)
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅構内のポリス・ボックス。

建物の中は日本の派出所とあまり変わらないようであった。
旅行者の問いかけに警察官が手振りを交えて話していた。
スリの被害に遭ったらここに駆け込めばよいのかと変なことを考えシャッターを押した。
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅で眠る列車。

運転手も乗客もいない、もちろんエンジンもかかっていない、きょう一日の出番を待っている物静かな早朝の列車。普通列車だろうか?
(朝6時ごろ)
ユーロスター

ミラノ、ローマ、ナポリ間などの都市間幹線で運行されている、イタリア版の「新幹線」といったところである。
発車は合図(ベル)なしで動き出すから一旦乗り込んだら外に出るな、と添乗員の言葉を忠実に守って座っていた。
ところで改札の疑問は、プラットフォームに自動検札機があり、これに自分で切符を突っ込んで時間や駅名を打刻をするそうである。
ツアーの団体は添乗員がすべてやってくれるから検札機のある場所も知らなければ、チケットの顔も拝んだことがない。楽ではあるが社会の仕組みが分からないと寂しいようでもある。
 
こちらはわれわれツアーが乗り込んだ2等客室。
座席は向かい合わせで固定式のテーブルが付いている。一枚の板を上に引き上げ手前に寝せると広いテーブルになる。
中央の通路を挟んで両側に座席が2席ずつ並んでいる。座席の座り具合は新幹線よりもゆとりがあり楽なようであった。

※青いペットボトル(水)が目に付きませんか。飲んでいる人、手に持っている人、テーブルに置いている人、ひとり一人がこうしていつも持ち歩き、飲んでいます。買う時には、「ノン・ガス・アクア」と言わないと酸っぱい味のガス入り水をくれます。店では約500CCボトルで2ユーロが相場のようでした。
こちらは1等客室。
2等車との違いは通路を挟んで横方向に2席と1席。1座席少ないぶん座席の巾にゆとりがある。
そのほか1等車では無料の新聞と飲み物のサービスが付いているという話。
こちらは売店
飲み物はカウンターで立ち飲みができる。
ワインを楽しんでいる人が多かった。
こちらは食堂車。
とはいっても1両の車両を半分に仕切り、売店と食堂の2室に区分けしている。
夕食時間前で残念ながら利用者はいなかった。
2等車のトイレ。

投げ込み禁止のデザインが面白い。
1等車のトイレはもっと豪華らしいが、気が引けて入る勇気がなかった。
4時間の列車の旅はその内にお尻が痛くなってくる。
カメラを持って車両探訪に出かけた。トイレの中まで探訪する気はなかったが尿意をおぼえ中へ入った。禁止マークのデザインが気に入り、シャッターを押してから出てきた。
自席に黙って座っていると、向こうから車掌さんが検札に廻ってきた。団体の席と知ってチケットを持っている責任者(添乗員)を探している様子である。同行の一人が添乗員は「あそこ」と指差した。ところが添乗員はテーブルにうつ伏せになって熟睡していた。いかにも疲れた!といった格好の寝姿である。
旅行バッグなどの大きなかばんは、ホテルからホームまではポーターが運んで列車に投げ込んでくれるが、そのあとは添乗員がデッキにある荷物置き場の専用スペースまで運び積み重ねる。重さ20キロ近くあるバックの数は自分の受け持分だけで30個ぐらいになる。添乗員はまだ若い痩せ形の女性で、よく一人で積み上げるものだ、と感心して見ていたが、やはり列車が発車した安堵と疲れから睡魔に襲われたのだろう。
疲れきった添乗員の姿を見た車掌さんは立止まってしばらく眺めていたが、笑いながら黙って通り過ぎて行った。背の高い太った男性の車掌さんだったが思いやりのあるイタリア男性に心打たれた。
その様子に見惚れているうちに写真を撮るのをすっかり忘れてしまった。
今になってあの車掌さんの写真がないのが悔やまれてしかたがない。

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