熊野神社の百手まつり

今年も例年とおり、2月1日午後2時から破籠井(わりごい)の熊野神社で「百手祭り」が行なわれました。

「百手祭り」は、古くから伝えられた悪魔退散、厄払いの神事です。境内に注連縄を張り、祭壇を備え、正面に藁で作った丸い輪の的を掛け、中央に大きな紙張りの的を置き、裏に「鬼」と書いた紙を貼り付けておきます。

準備中の祭壇、中央には天狗の面と的がおいてあります。 的の裏側には鬼と書いた紙が吊るしてあります。的の中心に矢が当たると紙は射落とされます。

的射の神事に使う弓矢は、当番の家々から男女が集まり、弓・矢の材料となる、樛(きゅう)の木、細い女竹をその朝のうちに近くの山から採ってきて、境内で作りあげたものです。

 祭壇の正面にござを敷き、その年四十二歳の厄払いの男女、年祝いの六十一の人たちが正座して座ります。厄払い、悪魔退散の神事が終わったあと、いよいよ的射の式に移ります。

 的から七、八メートル離れたところに宮司さんが立ち、弓矢をとり、神歌「神代より力まさしきみことにて雲井に近き桃の木の里」と歌いあげ、的に向かってエーイ、エーイと一本目の弓で六本の矢、二本目の弓で六本の矢を射ます。一本の矢が一カ月、一年で十二本の矢ということです。

矢が中心い当たり鬼と書いた紙が舞い上
がった瞬間です。赤印が舞い上がった鬼

 矢を射終えた宮司は「野林(この神社のある地名)の熊野の神の恵みにて破篭井(ワリゴイと呼ぶ部落の名前)の里の栄え守らん」と神歌を詠います。
 的射の結果から、宮司がご託宣を伝えます。「今年は最初の弓が途中で折れ、この一年は不吉な年になりそう。」と88歳になる宮司さんのお言葉でした。

 このあと豆まきがあり、最後は、当神社に備えられている天狗の面を宮司さんと巫女さんが鈴を鳴らしながら、境内に集まった善男、善女、子供たちの頭にかざし、無病息災、厄除けのお祓いをしました。

天狗の面をかざしてもらう参詣者

 境内では、たき火で温めた「とっぽ酒」を、これまた青竹で作った猪口に入れ、参拝者に振る舞ってくれました。

お神酒と肴を振舞ってくれる氏子さん 熱燗の「トッポ酒」をいただく
参詣者たち

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