五家荘の山へ(2)

第2日 みぞれ降る保口岳 (11月3日)

5時40分起床。外を見ると地面も木々も濡れている。雨は降っていなかった。テレビのスイッチを入れ気象情報を見た。熊本県側は雨、宮崎県側は晴、ここは九州山脈の馬の背の位置になる。どちらの天気になってもおかしくないところだ。宮崎県側の晴になってくれるように願った。

6時20分朝食、このころから雨は降り出した。

食事後、跡片付け、部屋の掃除をして出発の準備にかかった。昨夜のうちに部屋の使用料は管理人の区長さんが徴収に来ていた。雨衣を着込み完全武装の状態で車に乗り込んだ。林業センターを出発したのは7時20分であった。

きのう下見を済ましているので保口岳までは迷うことなく進んだ。いつの間にか雨はあがり、雲が切れ向こうの山には朝陽が差し込んでいる。紅葉が映え美しい。宮崎県側の天気になってくれたと喜んだ。


保口岳登山口に向かう途中ガスが切れ陽が射した。

保口岳登山口で車は行き止まり。行き止まりには方向変換が出来る広さがあり、車はそこの脇に止めた。

全員車から降りて準備運動をはじめようとしているところに道幅の狭い薮のような登山道から一人の紳士が降りてくる。

背広にネクタイ、紳士靴の姿はどうしてもこの山の中には馴染まない。あれ?タヌキに化かされたのかなと疑った。

挨拶を交わし、山の情報をリーダーが尋ねた。この紳士はすぐ上に住んでいる人だった。ここは保口部落といって10世帯あったが今は5世帯になってしまった。保口岳までは一時間で登れる。御前峰まではお祭りの時に道を下払いしているので登りやすく間違うことはないだろう。などと話してくれた。

この紳士は、今日から始まる『五家荘紅葉祭り』に出かけるところだった。たぶん地元人として、祭りを開催する側の人ではなかっただろうか。

階段を登りまもなくしてその紳士の家はあった。家は閉め切られ、庭先に一匹の猫が座っている。声をかけると顔だけこちらに向け「ニャーン」と大儀そうに声を出した。屋敷の横を通り抜け登った。


紳士の家の横に登山口の道標があった。

この廃虚となった屋敷を通って登った。


しばらく行くとまた茅葺きの家があった。ここは空家だった。窓越しに覗くと農具や生活用具が残されており、離村してからまだ年月が経っていないようである。庭先を通り抜けるといよいよ人が通わない薮道になった。振り返ると谷底は雲に覆われ、対岸の山は浮いて見えた。時折陽が射し、ハゼの紅葉が目に痛いほど跳ね返ってきた。

地蔵峠に着いたのは出発して1時間後。紳士のおじさんの説によれば保口岳に着いてもよい時間である。しかし、地図上ではまだ半分しか登っていない。


後ろを振り向けば雲海があった。

一時陽が射しハゼの紅葉が綺麗だった。

地蔵峠のお地蔵さん

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